ダイハツの試験不正について親会社としての責任を問われていたトヨタですが、トヨタ自動車グループの豊田自動織機が2024年1月29日に、トヨタ向けの自動車用のディーゼルエンジンの試験でも不正があったと発表しました。ディーゼルエンジンの出荷を止めると発表されています。
新型ランドクルーザー=トヨタ自動車提供(朝日新聞)より引用
「ランドクルーザー」や「ハイエース」が出荷停止に
豊田自動織機がトヨタ向けの自動車用ディーゼルエンジンを作っていたわけですが、このエンジンを積んだ車種は人気車種の「ランドクルーザー」や「ハイエース」です。
豊田自動織機からのエンジン供給が不能となれば、トヨタはディーゼル搭載車の出荷ができません。
豊田自動織機の公式発表の内容
豊田自動織機による公式発表は以下の内容です。
当社がトヨタ自動車から一部開発を受託している自動車用エンジン 3 種(下記表)については、トヨタ自動車ならびに日野自動車が自動車型式指定の申請手続きを行っております。その申請手続きの中で、出力試験を当社が担当し、必要なデータを提出しておりますが、試験の際、燃料噴射量を調整し、出力・トルクカーブについて、見栄えの良いデータにするといった行為が判明しました。なお、出力の性能につきまして、抜き取り検査で、出荷基準値を満たしていることを確認しています。
2024年1月29日 エンジン国内認証に関する調査結果について
2024年1月29日 エンジン国内認証に関する調査結果について
https://toyota-shokki.co.jp/news/item/20240129_release.pdf
要約すると、豊田自動織機が不正を働いたと見られるディーゼルエンジンの型式は、1GD、2GD、F33Aの3機種です。エンジン試験の際に燃料噴射量を調整し、出力・トルクカーブについて見栄えの良いデータにするといった行為を行なっていたとのこと。
豊田自動織機の公式サイトによるディーゼル車種
豊田自動織機が発表した一覧表と、公式サイトの車種一覧表を照らし合わせてみます。1GD、2GD、F33Aを積んだ車種は、ランドクルーザー300、ランドクルーザープラド、ハイエース、ハイラックスであることがわかります。
用途 | 種類 | 名称型式 | 主要諸元 | 最高出力 kW/rpm | 最大トルク Nm/rpm | 搭載車種(代表車種) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
形式 | 排気量(cc) | 燃焼室 | ||||||
自 動 車 | デ ィ | ゼ ル | 1VD-FTV | V8DOHC | 4,461 | 直噴 | 151/3,400 | 430/1,200~3,200 | ランドクルーザー70 |
1HZ | 直6OHC | 4,163 | 渦流室 | 96/3,800 | 285/2,200 | ランドクルーザー70、コースター | ||
F33A-FTV | V6DOHC | 3,346 | 直噴 | 227/4,000 | 700/1,600~2,600 | ランドクルーザー300 | ||
1KD-FTV | 直4DOHC | 2,982 | 直噴 | 100/3,400 | 300/1,200~2,400 | ハイエース | ||
1GD-FTV | 直4DOHC | 2,754 | 直噴 | 150/3,400 | 500/1,600~2,800 | ランドクルーザープラド、ハイエース | ||
2KD-FTV | 直4DOHC | 2,494 | 直噴 | 75/3,600 | 260/1,600~2,400 | ハイエース | ||
2GD-FTV | 直4DOHC | 2,393 | 直噴 | 110/3,400 | 400/1,600~2,000 | ハイラックス(IMV) | ||
ガ ソ リ ン | A25A-FKS | 直4DOHC | 2,487 | 直噴 | 151/6,600 | 250/4,800 | RAV4 | |
M20A-FKS | 直4DOHC | 1,986 | 直噴 | 126/6,600 | 207/4,800 | RAV4、ハリアー |
グランエースやプラド、ダイナ、デュトロは現行から外れていますが、不正の該当車種に含まれています。
ハイエースはどうなる
人気のハイエースにはディーゼル車とガソリン車があります。
搭載されているエンジンは次の通りです。
ガソリン(2Lガソリン、2.7Lガソリン)
ディーゼル(2.8Lディーゼル)⇒1GD
ガソリン車の出荷には影響がなさそうですが、ガソリン車はディーゼル車に比べて燃料が高く、トルクが低いなどのデメリットもあるため、中古車市場でディーゼル車が高騰しそうな気配です。
豊田自動織機の不正の背景と今後
公式カタログを見る限り、ディーゼルエンジンの1GD、2GD、F33Aの3機種が出荷できないとなるとトヨタのディーゼルはほぼ全滅です。
今回の不正は、ダイハツのように衝突安全性能など直接保安基準にかかわる内容ではありませんが、不正は不正です。認証試験に不正がある異常は出荷停止です。
排気ガス規制などの影響があると考えられますが、認証を得ているメーカー、エンジンもあるので理由に正当性はないでしょう。
ダイハツの例のように出荷停止による問題は、再開まで1年はかかるだろうと見られていますので、主力車種の納期は未定になるでしょう。
ダイハツの不正に関する記事はこちら